日本でも大きく報じられたソウル梨泰院地区の事故をまとめてみました。

概要及び原因

2022年10月29日、大韓民国ソウル龍山区梨泰院の狭い路地にハロウィンイベントを楽しもうとする数多くの人が集まって発生した圧死事故。

159人の死者を出し、韓国内で2014年のセウォル号沈没事故以後、最も多くの人命被害が発生した事件と記録された。 

コロナが落ち着きイベントを渇望していた人々の勢い、ハロウィンイベの人員不足および警察、行政当局の安全管理と統制不足および国民の判断力低下で発生した事故。人口密集度が高まり足が宙に浮いて波のようになり「群衆流体化※」が起きた。

※群衆流体化とは人波によって個人の意志とは関係なく群衆全体が流されたように動く現象。

事故より韓国内オン/オフラインを問わず、予定されていたイベントの多くは、ほとんど中止または延期された。

事故様子

事故当日午後10時頃、梨泰院路地低地帯約5.5坪空間で通行人同士が右往左往する過程で絡み合い、次第に密集する状況で不便な姿勢を維持したまま応急救助を待たなければならなかった。

後方の人波だった人も前方に累積し、後方の人波から押されると人々がどっと倒れていわゆる将棋倒しによって前方の惨事が加重された。 概ね18トン/秒の衝撃量という推測もある(※)。

※一人基準で18トン/秒に当たる衝撃力を全て受けることはできない。実際には集まった人々の間に分散される。 高台側の人々の体重和が傾斜と速度差に比例して下に加重されるが、専門家はこれを20人当り15t~18tに補正した。 上の人波の人たちの平均重量が60kgだと仮定した時、一人当り72kg程度の重さを押さえられる間ずっと耐えなければならなかっただろう。 体重が72kgより少ない人たちは、これに耐えられなかっただろう。

不運が重なった

泣きっ面に蜂、弱り目にたたり目でスマートフォンを取り出す状況ではなかったうえ、トラフィック過剰により電話とデータ通信まで不通になった状況の中で、後方の人波はこの時までも状況の深刻性を把握することは不可能であり、ただ止まることなく人が降りてきていた。

前方の人波で嘔吐する人が出始めると一斉に「後ろへ後ろへ」と叫びながら後方の人波が大部分逆行して抜け出したが、すでに300人余りの死傷者同士が意識を失い体が挟まって取り出すことさえ難しい状況だった。 一部の人々はすでに外傷性窒息、下に敷かれた人々は臓器破損による腹部膨張が進行している状態だった。 結果的に約18.24m²の空間で150人余りの死者が出た。

一方、通報を受けて出動した救急車の道路状況が円滑ではなく、映像の最初の通報以後40分以上が過ぎた23時になってようやく警察の道路統制にともなう救急車進入が初めて円滑になったという。 しかも救急車移送は負傷者ではなく死亡者が先に護送されるなど混乱が深刻だった。

また現場では火事場泥棒が出現、スマートフォンを紛失したという生存者の証言が相次ぎ、カバンを紛失した人が非常に多かった。

前日から事故の兆候

事故が発生する前日から数回現場の異常が報告されていた。

事故前日の10月28日、梨泰院の裏通りには動きにくいほど人が多かった。事故区間で渋滞が長くなると、一部の人々が前の人を押しのけて移動し、一部は人波に押されて倒れたりもする一方、人々の間で喧嘩になるなど危険な姿があったというマスコミ報道もある。 目撃談や映像、写真がネット上に掲載されたりもした。

また、某人気YouTuberは29日夕方に梨泰院でファンミーティングを行おうとしたが、前日の事前踏査で現場状況を見て梨泰院結集は危険だと判断し、ファンミーティング場所を南山に移したほどだ。

事故発生直前までの約4時間に110通報が警察が公開したものだけで11件が入っていた。 通報内容はすべて圧死事故の懸念だったが警察が軽視してしまった。 管轄警察署である梨泰院交番が事故地点のすぐ向かい側にあったにもかかわらず大惨事は起きた。 管轄警察署が上位機関であるソウル警察庁に事前及び当日にも機動隊支援を要請したが、ソウル警察庁が一連の理由でこれを断ったという。  警察庁は現在国民から無能扱いされている。

特定人物が疑われたデマ

特に事故の直後、特定人物に事故を起こしたという濡れ衣がかぶせられた。「キンパツ男性たちがやった」、「ウサギ耳を付けた男性が押した」など根も葉もない噂が出始めた。

デマ一覧

  1. うさぎ仮装をした人が押したという疑惑→防犯カメラを分析した結果疑いなし
  2. アボガドオイルを撒いて滑るようにした疑惑→防犯カメラを分析した結果疑いなし
  3. 特定人物が事故現場に誘導したり押した疑惑→調査、防犯カメラ分析結果疑い無し
  4. 現場そば某居酒屋が出入りをコントロールしたことで事故が大きくなった疑惑→店舗内で撮影された写真分析及び調査結果疑い無し
  5. クラブの守衛が客をガードするため押した疑惑→調査、防犯カメラ分析結果疑い無し
  6. 事故当日集会のあった民主労総関係者が押した疑惑→調査、防犯カメラ分析結果疑い無し
  7. Twitter上で「正直俺が押した」とつぶやいた人がいた噂→調査結果該当ツイート無し

…という様々な疑惑が出てきたが全てがデマだった。責任転嫁の標的を作り正義を主張、韓国はこういう偽りストーリーが広がりやすい性格を持っているようだ。

規模

これまで韓国で発生した圧死事故の中で最も被害が大きかった1959年、釜山運動場圧死事故(死者67人)を上回り、歴代大韓民国圧死事故死亡者数1位となった。

海外の圧死事故と比べても1989年ヒルズ惨事(97人死亡)や2022年に発生したカンジュルハンスタジアム惨事(132人死亡)より死亡者規模が大きく、世界的にも大きい圧死事故になった。 

事件余波

警察官、救助隊員をコスプレと勘違いして事件の深刻性を感じられず、統制がまともにできず対応が遅れたという記事が出た。 

この事故をきっかけに、軍人、医療スタッフ、警察、消防士など人命と直接つながるコスプレを自制したり禁止させなければならないという声も高まっている。

以上。

事故に巻き込まれた方々の快復及びご冥福をお祈り申し上げます。

この事件は学ぶ点がいくつかありましたね。

最後までお読みいただきありがとうございます。