イ•ヒョンホ君誘拐殺人事件は「カエル少年失踪殺人事件」「華城連続殺人事件」とともに韓国三大未解決事件だったが、

2019年に「華城連続殺人事件」の犯人が明らかになり「カエル少年失踪殺人事件」と共に再び韓国で焦点となっている。

おおまかな事件説明


1991年1月29日当時9歳だった男児イ•ヒョンホ君が誘拐され、その日から犯人の脅迫行為が始まる。脅迫電話は44日間約60回にわたって続いた。1991年3月13日ヒョンホ君は遺体で発見され公開捜査へ。犯人を検挙できないまま、この事件は2006年に時効になる。

今回は事件に関わっている可能性が高いとされる人物「A氏」について主にまとめた。
犯行は3人以上のグループの可能性が高く、A氏はその中の一人であるが主犯ではないと現在は考えられている。

イ•ヒョンホ君の家庭事情


当時ヒョンホ君の父親は再婚の状態で、実はヒョンホ君の実の母は別にいる。脅迫電話等の対応していたのは新しい母親だった。
犯人に最も近いと疑われる人物は離婚前の母親の従兄弟であるA氏。
父親が離婚した時、Aとは離婚問題と関連して数回衝突するほど仲が悪かったうえ当時無職であちこちに金を借りるほど資金事情も良くなかったため犯行動機も十分だった。

犯人はヒョンホ君の家庭事情を知る人物


犯人はイ·ヒョンホ君の実兄まで取り上げて脅迫し、そのほかにもヒョンホ君の祖父が資産家なので十分に金を渡すことができるのではないかと、あらゆる家庭の事情を先に言及した。

子どもに「知らない人について行くな」は韓国も同じ


90年代は児童誘拐事件が流行ったため、家庭でも学校でも見知らぬ人にむやみについていくなと指導を強化した時期だった。
分別がある程度可能な9歳のヒョンホ君を簡単に連れていった、家の事情をよく知っている人物「A氏」が関わっている可能性は非常に高い。

ヒョンホ君はA氏と待ち合わせしていた?


誘拐された当日の行動もA氏への疑いを強めている。夕方になると他の友達はみんな家に帰ったが、イ·ヒョンホだけが特に遊び場に残っていた。 ヒョンホ君の姿を最後に目撃した友人の証言では、「どうして家に帰らないの?」と聞いたら「お母さんが怒る」と答えたという。 つまり、ヒョンホ君が元母側の親戚であるA氏に会うことについて、父親と再婚相手の母の機嫌を思って答えた可能性が高い。

犯行グループの筆跡のクセ


犯人が脅迫や金銭要求指示を書いた手紙は直筆で指紋は残っていなかった。重要な証拠として残る特徴的な筆跡を紹介。

1)ハングルの’ㅇ’を母音に着けて数字の6のように書く。

2)ハングルの’ㅁ’を下側をあけて書く。

3)ハングルの’ㄹ’を数字2のように書く。

4)ハングルの’ㅈ’を数字2ように書き線の終わりをハネる。

脅迫電話声紋分析、話し方の分析


警察は声紋分析を多くの専門家に依頼した。
電話で話す声はすべて1人の同一の声だという結論が出た。 (声は二人という分析もあったが取り消された)

音声分析専門家の話によると、「電話をかけた脅迫犯は、アナウンサーのように正確な発音をする」と指摘した。

脅迫電話の男の話し方特徴


脅迫の電話は「私たち」あるいは「私ども」などの単語をよく使用したこと、興奮しても敬語を使用し、日常的に使わない専門用語を使用(どういう専門用語かは公表されていない)していた。
また、「とにかくですね」「~してもらいます」(韓国語で)の言い回しをよく使っていた。
英語の発音が正確であり、語彙力からみても高学歴者と現在は推定されている。

1991年以前は口座開設が自由すぎた韓国


犯人グループが開設した商業銀行や韓一銀行口座の預金主の名前も、A氏の周辺人物であることが明らかになった。
1991年当時は、金融実名制が実施される前だったため、身分証がなくても自由に、何の名前でも口座開設が可能だった。

A氏の声と脅迫電話の声が一致


脅迫電話の声を国立科学捜査研究所に依頼して声紋分析を行った結果、Aと一致しているという結果が出た。 彼は当時満29歳だった。

A氏のアリバイ


警察はA氏を呼んで取調べを行った。 しかしAはソウルの公衆電話から脅迫電話がかかってきた日に慶州にいたと主張し当時使用した高速道路の領収書を証拠物として提示し、さらに慶州に泊まったというホテルのフロントにAの写真を見せた結果、当日宿泊していたことが確認された。

A氏は電話通信の造詣が深い


A氏が慶州にいたのは事実だが、そこでソウルの共犯に電話をかけ、これをまたイ·ヒョンホ君の家につなげるなどの方法でいくらでもアリバイ操作ができる。
特にA氏が大学で電気通信を専攻したという点で、そのような技術を知っている可能性が高い。
A氏は他の日については記憶が曖昧なのに対し、脅迫電話が初めてかかってきた日についてのみはっきりと記憶し、様々な物証まで確保しており、アリバイを操作した可能性がある。
A氏のアリバイもこの事件に数人が加担すれば十分操作が可能だ。 誘拐や身代金要求などの実際の行動は他人が行い、Aは慶州で通話のみを担当したと考えることもできる。


しかし明確な証拠が確認されずA氏については嫌疑なしとなり、事件は振り出しに戻ってしまう。

グリコ森永事件を模倣?


事件の内容は異なるが、事件の手法だけで見るなら、日本のグリコ·森永事件で犯人たちが使った手口がこの事件と類似している部分がある。
電話や手紙で指示を出したこと、指示の手紙の置き方、車の電話を使用したこと、
などが似ているが、犯人がグリコ森永事件を模倣したかどうかは分かっていない。

AIの分析に今後期待


現在この事件の唯一の証拠である犯人の音声をデジタル化し、AIが分析する作業を進めているという。 又、犯人が残した文字も大事な証拠になるため科学捜査研究所が犯人の感情や心理の分析を行っている。

時効でも諦めない姿勢の韓国警察


公訴時効が満了した事件だが、警察庁は真相究明として、未解決事件捜査チームを中心に期限を設けずにイ·ヒョンホ君誘拐·殺人事件再捜査を行い事件の実体を把握し、類似の事件の犯罪予防のために、そして遺族の恨みを少しでも晴らしたいと言う。

(了)