20年以上が経過して今もなお韓国民衆に強く記憶に残る至尊派事件ですが、
今回は事件の流れではなく事件が与えた様々な影響や、重箱の隅をつつくような小話を中心にまとめてみました。^^;;

まず事件を簡単に説明。

【至尊派とは?】


1993年7月~1994年9月までに5名を殺害した連続殺人グループ。富裕層をターゲットに犯行。親分キム•ギファン元死刑囚を中心に6名のメンバーで構成される。


【至尊派という名称】


至尊派という名前は、彼らが犯罪を犯す前に額に至尊と書かれた頭巾を巻いていたことと、親分であるキム•ギファンのニックネームが「至尊」だったことを合わせ彼らを検挙した捜査課長が至尊派メンバーと合意の下でつけたものです。香港映画「至尊無常」の影響を受けてつけたとも言われています。
このように「●●派」という名前は警察が管理便宜のために任意でつけたものであり、犯人グループが称していたわけではありません。

【6人グループでの連続殺人は他に例がなかった】
三人以上が集団を結成して発生した連続殺人事件はその数が極めて少なく、至尊派は構成員の数が6人もいたという点で非常に珍しいケースでした。至尊派は世界犯罪史的な観点からもかなり特殊な事例であっただけに、外国メディアから取材を受けたりもしました。

【至尊派の指針】


一、金持ちを憎む。
二、10億貯めるまで犯行を続ける。
三、裏切り者は殺す。
四、女は母親も信じるな。

彼らが検挙されるきっかけは拉致監禁していた女性が逃げ通報したからでしたが、
「女は母親も信じないように」と掲げておきながら結局これを守らなかったために逮捕された格好になりました。 実際に逮捕された後 親分キム·ギファンが「女性は母親も信じてはいけないと言ったのに愚か者」と言ったそうです。

【秘密のアジト】


1994年7月に彼らのアジトが完成し彼らはここを「阿房宮」(豪壮な家という感じの意味を含む)と称しました。
アジト建設中近所の住民はまさか彼らが背後でそんな恐ろしい犯行を企てているとは思わず
「若い青年たちが熱心に働いている」と満足げに話していたそうです。

アジトが完成すると彼らは平然と隣の住民たちを招待して引っ越し祝いをしました。 疑いを避けるため建物の外壁にピンク色のペンキまで塗り、一般家庭を装いました。地下にはお金をかけて犠牲者を拉致·監禁しておく監禁施設と遺体を焼却する焼却場を造りました。
資材購入のため借金もしましたが被害者から奪ったお金を返済にあてたそうです。
↓アジト


【交際相手も巻き込む】


至尊派は活動時、食事の準備や雑用などの女性員が必要だと判断しメンバーの交際相手である女性を合流させました。 しかしその女性が加担して2日後に至尊派全員が検挙され彼女は殺人に直接参加しなかったという点が確認され軽い処罰を受けています。

【百貨店顧客リストが至尊派に流れる】


至尊派は犯行対象を探すため、百貨店販売部職員から百貨店高額取引者リストを購入します。 もちろん百貨店側も至尊派が殺人に使うということを知っていたわけではありませんが個人情報の流出が恐ろしい結果を招くこと示す最悪のケースでした。
顧客たちが百貨店側に抗議し、電話がマヒする事態が発生しました。

時代の違いもありますが顧客リストは売らないでほしいですね。

【カニバリズム】


殺害後の遺体を解体していく過程で、一人は遺体の一部を切り取って食べる奇行を見せました。 この時 「人のお肉を初めて見ますね? おいしいですよ」という会話をしたそうです。
切断した遺体を焼却する過程に時間がかかったため彼らは遺体を焼却する時の臭いをごまかすために庭で豚肉を焼いて食べ、隣の住民に焼いた肉を配りました。
「なぜ人を食したのか」というメディア記者の質問に対する答えは「人間をあきらめるためだ」と荒唐無稽な言葉を吐くなど、反省の気配はなく殺人の理由を社会のせいにし自分たちを正当化しようとしました。

【至尊派の武力】


至尊派メンバーたちは中学後輩の武器ブローカーから武器を購入し、犯行道具を完備していました。
警察が至尊派から押収した武器はダイナマイト23個、雷管14個、望遠レンズ付き空気銃1丁、ガス銃1丁、登山用杖に偽装した大剣7本、大剣4本、電気衝撃機1個、電気棒?1本、無線機2台、ポケットベル5個などでした。

【事件の影響で高級車売上ダウン】


彼らは高級中·大型車を犯行対象にしたという事実が報道され、中·大型車の販売量が一時減少し、高級車の中古売却が急増しました。 取材熱気が誤って広がった良い例となりました。
当時ヒュンダイ自動車のグレンジャーが富の象徴でしたが、車さえ良ければ金持ちというマインドで犯行対象を特定するということ自体が非常に単純な思考だということを示しています。
至尊派の一人が「グレンジャーではなくソナタに乗っていたなら殺さなかっただろう」と語っています。
グレンジャーのイメージが下がると、ヒュンダイ自動車では当時グレンジャーのリムジンモデルや次世代グレンジャーとして開発されたモデルに「グレンジャー」の名前を継承せず、新しい名前をつけました。

↓当時のグレンジャー



【現場地域もイメージダウン】


事件後しばらくの間、至尊派アジトのあった全羅南道霊光郡の住民たちは自分たちが霊光郡の人だということを口に出すことができなかったと言い、霊光郡の人たちが他郷に出れば殺人者と同じ町に住んでいた人という被害を受けたといいます。

【余罪の可能性】


警察が捜査過程で押収した証拠物のうち、至尊派が普段移動する時に運転していた乗用車の後部座席から遺骨の粉が入ったビニール袋が発見され、これがまた別の被害者のものではないかと追加調査に入ります。 一味はその遺骨がキムギファンの亡き父親のものだと主張しましたが、結局遺骨が誰のものであるかはっきりしませんでした。 警察は至尊派アジトがあった一帯の住民を対象に聞き込み捜査を行いましたが、特別な手がかりは得ることができませんでした。
また犯行手口が類似した未解決バラバラ殺人事件と、交通事故偽装他殺事件について追加調査を行いましたが捜査の結果は明らかになりませんでした。 捜査も一週間で終了し急いで捜査を終結させたのではないかという批判の声があがりました。 

【死刑執行は早々に】


至尊派全員は1994年10月31日ソウル地方裁判所で強盗殺人、死体遺棄、人肉摂取、死体損壊、犯罪団体組職および加入罪、強姦などが適用され求刑通り死刑が言い渡されました。 その後、高等裁判所、最高裁判所で死刑判決を受け1995年11月2日至尊派員6人に対する死刑執行が迅速に行われました。
通常死刑執行の決定は少なくとも2年は待つのが通例であることを考えれば、非常に異例のことです。社会的に途方もない衝撃を与えた例外的なケースであったのか推測できます。 

衝撃的な事件とはいえ急ぎすぎな感じがしますね。余罪もはっきりしないままに執行してしまうとは。。

【メディア規制強化】


至尊派事件の影響でアクション映画(特に暴力と破壊を伴う)の発売が減少し、コメディーや人間味あふれる家族映画が増え “脱アクション”の兆しを見せるようになります。
1994年9月公演倫理委員会がこれまでポルノ映画にだけ集中した事前検閲を暴力物にも重点を置くという方針を発表すると、国産アクション映画の製作が減少しました。
このためアクション映画はカットされて公開され、ペ·ヨンジュンデビュー作も1次審議で脱落して上映がキャンセルされたことがあり、地上波ドラマは一切の暴力や性的シーンが登場しない全ての年齢層の観覧可レベルのドラマだけが一時制作され放映されました。

ゲームも同様で、1990年代暴力性を強く表現するゲームは韓国で本格的に発売されることはほとんどありませんでした。 公演倫理委員会で血痕の表現があるものは「15歳以上観覧可」になり、血の色まで白色に変えた豪州版をかろうじて輸入したときも「年少者観覧不可」という判断を受けました。

一方、犯人たちが普段好んで読んでいたというホラー小説、ホラー映画のタイトルが出回り、このような「至尊派たちが好んで見る作品」を取り上げることに対し非難する声も上がりました。

【警察が優しい捜査】


至尊派グループは刑事たちの前では柔順になったといいいます。 強く出ようとした刑事たちがむしろ当惑したほどでした。

調査中の食事時間に何を食べたいかという質問に至尊派は「ジャジャン麺」と答えましたが、捜査班長が「もっと高いの注文していいぞ」と言って少し高めの中華飯を注文したそうです。

現場検証をする際、至尊派の一人が刑事を抱えて崖から飛び降りて自殺しようと考えたそうですが、それができなかった理由は捜査の過程で刑事たちが自分たちに優しくしてくれたためだと語っています。生きてきて初めて受けた人間的な待遇だったのだそうです。 また裁判の過程でも検事や弁護士たちが自分たちに心からの忠告を惜しまないなど「親身に接してくれて偏見がなくなり感謝したい」と語りました。

【至尊派の名前を利用する犯罪が発生】


至尊派の検挙後、至尊派員や共犯を詐称した犯罪が数件発生しました。 1994年10月ある薬剤師が納品する家に至尊派メンバーの名前で「至尊派弁護士選任費用として2000万ウォンを用意しなければ家族を皆殺しにする」という内容の脅迫状を送り拘束されました。 この薬剤師は、薬局以外にも事業を展開していましたが、資金不足により犯行に及んだことを認めました。
また1997年7月、陸軍某部隊常勤予備役兵長とその知人だった精肉店従業員が「至尊派」の先輩を自称し、富裕層女性を拉致して金品を奪ったことで緊急逮捕される事件も起こりました。

【知能指数検査】


知尊派メンバーのIQは大部分が90点台で、唯一キム•ギファンだけが100以上でした。 ほぼ平均数値であるため、特に知能が低いとは言えませんが知能水準が決して高くなかったことを示しています。
一部では彼らの中で最も知能が高い親分が相対的に知能水準の低い部下を利用したのではないかという推測もあります。
至尊派の刑務所同期や刑務官らが至尊派について「あれほど恐ろしい犯罪を犯したやつらがこれか」と思うほど意外と間抜けで純真で驚いたといいます
至尊派は自ら作詞·作曲した歌もあったそうです。 後にキム•ギファンは「野望」という名前の本まで書く計画だったといいます。

中二病に近いような気がします。

【出版社の釣り】


全国各地から至尊派に悔い改めを促す内容の手紙を送られてたといいます。 その中で至尊派メンバーへ「手紙と一緒に日記を書いて送ってほしい」と要求したある女性と女子学生がいましたが、実はこの2人は存在しない架空の人物でした。これは出版社の社員たちが企んだ手紙で、犯人の書いた物を利用しベストセラーを狙う目的がありました。 彼らが送った日記と手紙は拘置所で不許可になって回収されましたが、死刑執行後至尊派の遺品整理過程で発見されたそうです。

【現在アジト跡は】


ある教会がアジト跡の土地を買って教会を建てようとしましたが、この計画は頓挫し現在空地として放置されています。アジト周辺の土地は全羅南道霊光郡が買い入れて公園を造成しました。

【臓器提供は断られた?】


至尊派は検挙直後から各種のインタビューで「お詫びの意味で臓器提供をしたい」と話していました。 初公判も「真剣に被害者と遺族に対する謝罪の意味で臓器を寄贈したい」という考えを示しました。全員臓器提供書に署名しましたが提供を拒否されたのか手続き上の問題が発生したのか、明確な理由が明らかにされないまま結局霧散してしまいました。

憶測ですが人肉食べたからよろしくないと判断されたんじゃないですかね?

【映画化】


至尊派事件はこれまで何度か映画や小説のモチーフ、ドキュメンタリーになってきました。
また新たに現在「至尊派事件」が映画化される予定だそうです。 シナリオが完成し、主要な配役キャスティングが進行中だといいますがコロナの影響なのか予定より進んでないようです。

被害者が多数存在し生存者までいる連続殺人事件であるため、商業映画として扱うにはデリケートな素材であり被害者と他の被害者の遺族たち、そして至尊派員たちの遺族たちの同意を適切に求めたのかも問わなければならないと思います。
映画化は容易ではなく2009年に「栄光の脱出」というタイトルで映画化を推進したが失敗した過去があります。
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(了)
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最後までお読みいただきありがとうございます^^