ドキドキ初飛行

航空機を開発して初飛行を迎える日はとても緊張します。

もちろん飛行前にいろいろな試験が行われます。地上で強度試験、地上システム性能試験などを行います。

その他にテストパイロット向けに地上フライトシミュレーション試験を行います。地上に模擬操縦席を作って、前方にはフライト時の模擬風景を写し出し臨場感を得るようにしてあります。この試験はかなり前から実施し、パイロットの指摘で不具合が生ずれば改良します。当然ながらパイロットは沈着、優秀でなければなりません。例えば戦闘機ならば自衛隊パイロットの中でも特に優秀なパイロットが選ばれてきます。

(写真はイメージです)

試験現場は、操縦席に座ったパイロットが真剣に計器を見つめながら操縦し、パイロットが「反応が悪い。おかしい。これはだめだ」と言えば評価最低として満足してもらえるまでシステムを改善します。そして再テストの繰り返しです。

パイロットが確認

ある日パイロットの「ぎゃー」という叫び声がして、何事かと見学者らが色めき立ち、駆け寄り見ればパイロットがハーハー、ゼイゼイとしていました。

計測要員に「どうしたんですか」と尋ねれば機体が墜落したとのことでした(シミュレーション内で)。実は墜落時のクラッシュ音まで模擬していなかったので計器や模擬視界を直接見てない者には状況がわからないのです。

パイロットの叫び声のみが広い試験場に響きわたりました。直ちに原因究明です。例えパイロットミスで墜落したとしても、ミスを引き起こす何らかのシステム欠陥があるはずという前提で対策を検討することになります。

地上模擬飛行試験は年々進化していますが、どこかに見落としがあるのではと毎回ヒヤヒヤします。

さらに初飛行となれば緊張そのものです。過去に墜落した事実がありますからなおさらです。

不幸にも墜落した場合、無事に帰還した場合どちらも伝説が生まれます。

…続く。

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発行元:名古屋航空技術http://www.jade.dti.ne.jp/~nat